青の秘密

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2017年冬の新作である、「結晶形態図×波佐見焼」。
素焼、青磁、白磁の3つのランナップを発売しました。

このなかの「白磁」が白くなくて、スタッフも首をかしげていましたが、その謎が解明されました。

色調を補正してすこし強調させましたが、青いです。
これはむしろ青磁ではないでしょうか。

そう思われるのは、実は正解です。

青磁の青は、鉄によるものです。
酸化第二鉄が、高温の還元焼成によって酸素をひとつ手放し、酸化第一鉄に変化することで発色します。通常は釉薬に酸化第二鉄を加えることで青磁の色を出し、逆に白磁の釉薬には鉄は含まれていません。

ところが、鉄の供給源は釉薬だけではありません。
粘土にも入っているのです。

波佐見焼の代表的な陶土は天草陶石と呼ばれるもので、熊本県の天草で産出される粘土です。チタンや鉄の含量が少なく、そのため白く絶縁性の高い磁器の素材として国産の磁器材料の8割を占める良質な素材なのです。結晶形態図の素材もこの粘土を使っており、土によってはきれいな白い磁器が出来上がります。試作品も、それはそれは真っ白な、白磁と呼ぶにふさわしい出来上がりでした。

しかしやはり天然のものなのでロット差があります。
今回の本製造ロットには若干の鉄分が含まれていたようで、粘土から染み出した酸化第二鉄が還元して酸化第一鉄になったのが、白磁のうっすら青の正体なのでした。

調べてみると、白磁の中でも景徳鎮などは青白磁と呼ばれるらしく、釉薬に若干の鉄分を含ませて作るのだそうですね。今回の白磁は、正確には青白磁に相当する色味なのかもしれません。

おそらく今後も製造ロットに依存して、青の深みは変化するものと思われます。磁器は丹念に生地を練って空気を除くので、ロット内の鉄含量の個体差はそんなにないものと推測します。むしろ釉薬のかかり具合から生じる個体差のほうが目立ちますね。

どちらにしろ、天然の成分を使って職人が手作業で作り上げた品なので、どうしてもロット差や個体差が発生します。店頭に何点か在庫がある場合は、店員さんに頼んで中を見せてもらうと良いと思います。青磁と銘打った方はもっと深い青なので、そちらとも比較してみてください。通販などでそれが無理な場合も、一定の品質水準は保っていますので、一期一会の気持ちでどうか手に取ってくださいますよう……

あなたの手元に、あなたの好みにふさわしい小物が届きますように。

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