utopianoの布花標本WS

posted in: 雑談 | 0

utopianoの布花標本WSを体験してきました。

utopiano

「utopiano」は布花の作家名です(以下、utoさんとお呼びします)。
植物を地上部だけではなく地下茎や根まで、器官を細かく分解してその細部をつぶさに観察し、それをもとに型紙を起こして布で再現するという「布花標本」を作られています。
関東在住ですが北の植物に魅せられて夏は北海道に滞在。主に2拠点で活動しています。その地その地の植物を採集し観察しながら布の花を作り、旅人のように夏に北を訪れる……くわしくお話を聞くにつけスナフキンが思い出されます。メルヘンなくらしを実現している素敵な作家さんです。

植物を細かく観察はするし布花としてよみがえらせるのだけど、ただの模倣ではない。
そこに作り手の経験や哲学が存分に盛り込まれている。

というところに特に惹かれ、utoさんの作った素材を使ってutoさんのそばで花に仕上げる体験をしたくてワークショップに参加しました。

布花標本の哲学

植物を観察する、とひとことで言っても

 どんな種が、
 どんな地で、
 いつ育ったか。
 同じ花でも蕾か咲き掛けか開ききったか、
 あるいは散りかけか。
 そのなかのどの部分に惹かれたのか。

作り手によって全然みどころが違います。

さらにそれを布で再現するにあたっては

 その惹かれたもののどこをどんなふうに、
 どんな素材や道具を使って
 どういった手順をふんで
 誰が作るのか。

ほんとうにいろんなパラメータが存在して、試行錯誤でチューニングしながら作り上げていく。
そこに作家の経験や哲学が入り込まないなんて、言えるはずもなく、もはや生き様を映してるのではないかと思うくらいです。

今回私が体験したラナンキュラスは初心者でも完成度高く造れるモチーフとのことでしたが、その型紙は数枚の花弁がつながって真ん中に茎のワイヤーを通す穴が開いた形でした。これは初心者でも作りやすいように最適化されたもので、utoさんが作るときは連なった花弁をひとつひとつ分けるだろうとのことでした。でも分けることで重なった部分が嵩高くなって全体的な形が崩れる懸念があれば、つなげる選択もあるそうです。
また、花弁に使われている布は透明感のある化繊で、これはラナンキュラスの薄い花弁に最適なんだとか。なんとなく雰囲気的に自然素材志向なのかな~なんて先入観がありましたが、そういうことに固執せず「いかに作りたいものに仕上げるか」にこだわったところが作家魂だなあと感じ入ったのでした。

こういったことはルーチカで図鑑挿画を描くのにも共通していて、対象としている色のある立体の標本を、どうやってモノクロの二次元に落とし込むかというところには独自の工夫があります。挿画だけではなく図鑑で何を題材にするかということ自体も作り手の意思が多分に入ってきます。対象も素材も完成形もちがうけど、哲学の部分はとても共感できるし学ぶところが多々ありました。

参加者5人それぞれのラナンキュラス

そして出来上がったのがこちら。

今回の参加者は5人。私が座ったテーブルでは私を含めて3人が手を動かしていました。
同じ型紙を使っているのに、制作過程も仕上がりも三者三様でした。私はこんな活動をしていながらもお世辞にも器用とは言えないので、周りと比べて手は遅いし途中経過も「これでいいのか?できるのか?」みたいな感じで進んでましたが、出来上がってみるとコロンとかわいらしい、理想的なラナンキュラスができあがりました。
そこはやはり、utoさんの型紙と手ほどきの力でしょう。

並べてみると5人それぞれ形は違うけど、みなそれぞれ重なった花弁が見事なかわいらしい花をさかせました。
そして作っている途中は他の人の花の素晴らしさに圧倒されていましたが、やっぱり自分のがいちばん。「わが子が一番」に近い感情かもしれません。

haru.のスイーツ

ワークショップの会場となったのは西荻窪のお惣菜のお店、haru.。
ランチの会ではお惣菜を堪能できたみたいです。私が参加したのは午後の会だったので、haru.ではなかなか味わえない貴重なスイーツをいただきました。
とてもとてもおいしかった!

utopianoの布花標本をみるには、てにいれるには

utopianoの布花標本はかなり人気ですが、精力的に展示会などの活動をされているので比較的容易に見ることができます。初日に行けば手に入れることもできます。
ほかの作家さんとのコラボレーションや会場全体の雰囲気もとても素晴らしいので、ぜひ足を運んでみてください。

展示会情報

utopianoの布花標本をつくるには

グラフィック社から発行されている『布花標本 布で作る20の植物とブローチ』に写真とともに詳しい材料や手順が開設されています。こちらを参考にされるのが最も手軽です。

utoさんの哲学に触れながら布花を組む体験をしたいという方にはワークショップがおすすめ。
西荻窪、鎌倉、洞爺湖などで主に開催されています。

本格的な技術を学びたい方向けのお教室もあるようですが、こちらは一度ワークショップを体験された方に情報発信されています。定員の空きがあるタイミングもありますので、興味ある方はいちどワークショップに参加してutoさんに直接お尋ねください。

utopiano web site
また、InstagramあるいはTwitterの@utopianoをフォローすると最新情報を得ることができます。

おまけ:ルーチカで植物

かねてからルーチカでも植物を題材に図鑑を作ろうという話がありました。
ただ、植物を絵にした経験がそれほど多くないので、実現には多少、作画経験を積まねばなりません。

せっかくの機会なので、出来上がった布花を絵にしてみました。本物からutoさんが型紙をつくり、それを私が組み立てた布花が元なので現実とはかけ離れた花ですが……。
モノクロとカラーではかなり印象が違いますね。モノクロでもうすこし繊細な花弁を描画できたらいいなあ。ペンで花弁の薄さを表現するのは至難の業かもしれません。水彩画のほうはわりと雰囲気は出ていますね。ただ、こちらは「ボタニカルアート」という現在でも盛んな分野に踏み込むことになるので、もうすこしその分野の勉強が必要そうです。

Share