ステルクララの市場にはたくさんの工房やお店が並んでいます。
ある日、市場にあるpapeleria golaa::gotaaのお店に一人の小さな男の子がやってきました。
papeleria golaa::gotaaは紙作り職人の無口でシャイな姉golaaと、手先が器用で人なつっこい妹gotaaの双子の姉妹が営む紙工房と文房具のお店です。
男の子はどれだけたくさん泣いたのでしょう。真っ赤に泣きはらした目をしていました。妹のgottaが男の子に、わざといつもどおりにたずねました。
「いらっしゃいませ、お客さま。本日はどのようなものをお探しでしょうか?」
男の子は小さな声で「僕の友だちだった犬のジョンが、死んでしまって、悲しくて涙が止まらないので、涙をたくさん吸い取れる紙をください。」と言いました。
すると店の奥でこれを聞いていた姉のgolaaが
「お客さま。1時間ほどお待ちいただけますか?涙を止めることができる紙を作りますから。」と言いながら、店の屋根裏の部屋へ上がっていきました。
golaaが約束した1時間。妹のgottaは静かに男の子の話を聞いていました。男の子の友だちのジョンは男の子が生まれた朝に家の前に捨てられていた子犬だったのだそうです。男の子の父親が「これも何かの縁だろう」とその後男の子と一緒に育てられました。
「友だちでもあり、兄弟でもあったのね。」
「うん。ジョンはいつもやさしくて、僕を守ってくれたんだ。そしていつもかわいくて大きな尻尾を振っていたんだ。でも、僕はまだ子供なのにジョンだけおじいさんになっちゃった。」
男の子がまた大粒の涙をぽろぽろと流し始めてしまった時、姉のgolaaが小さなカードを持って店に出てきました。
「雲で作ったカードです。」
「むくむくでふわふわな雲をたくさん採っておいたの。それで特別なカードを作りました。これでジョンにお手紙を書きましょう。」
そういってgolaaは男の子にふわふわな雲で作った真っ白なカードと涙の色のインクと硝子のペンを渡しました。
男の子はカードに「ジョン。ありがとう。またいつか。」と書きました。
カードは男の子の手からそのままふわふわと上昇して、golaaとgottaと男の子の上にだけサラサラと温かい雨を降らせました。雨はすぐに止み雲のカードは犬の形になりました。
「あ。ジョンだ!」
すると西の空から大きな犬の形をした雲が流れてきて、小さな犬の形の雲と一緒にしばらくの間3人の上空でじゃれあうように浮かんでいました。
そして2つの雲はそのまま一緒に、流れて見えなくなりました。
「ジョンは、お母さんに会えたみたいね。」
gottaがそういうと、男の子はにっこり笑って大きくうなづき、
「僕もお母さんが心配しているから、もう家に戻らなきゃ。」と
姉妹にお礼をいって、何度も何度もおじぎをして、走って帰って行きました。