Prologue

それは、厚いフラノのコートがそろそろ不似合いになったある朝のこと

海辺を散歩してると、波打ち際にぼろぼろの地図が落ちていました。

それはどこかの街のようでした。

見たことのない街の地図はところどころかすれていて、潮のしみがあり、とても役に立つものには思えませんでした。しかし、漂着した硝子壜やシーグラス、きれいな貝殻などと一緒に持ち帰ると、街の輪郭がおぼろげに見えていただけの地図に、道や教会、学校、やがては市場まで現れてきました。

なにやら懐かしい馨のするその地図を、なぜか捨ててしまうことができずに数日経ったある日、ふと見ると、地図にはいろいろな店が出現していました。

これがStelklara(ステルクララ)の地図だと知ったのはそれからずいぶん後のことです。